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| つましいクリスマスの備え(※) |
「まあ、おとうさん、よかったわ。手伝っていただきたいのよ」。おとうさんに抱き締められながら、レナは言いました。「どうしたんだね。何かぐあいの悪いことでもあったのか」とマルティン・ルターは尋ねました。彼は大きく、かっぷくのよい人で、あごの張った鋭い目の人でした。「おうちがクリスマスらしく見えないの」とレナは訴えました。「ほかのものはみんなクリスマスだけのものなの。あしたはみんなで教会に行くし、ごちそうもたくさんあるし、贈り物の箱もできているのだけれど、おうちだけがいつもとちっとも違っていないんだよ」と、ハンスも口を添えました。「外は、クリスマスのためにおけしょうしているみたいだね」。幼いマルティンは、星が一つずつ輝きはじめた暗い夜空を見上げました。
子どもたちの物足りなさそうな顔をながめていたルターの額に、二つの深いしわが寄りました。そして、雪をかぶったもみの木と、またたく星をながめました。すると、急に額のしわが消え、「ハンス、早くおのを持って来なさい」と言ったのです。「はあい」とハンスは返事をしながら、家の方へ去って行きました。レナとマルティンは胸をわくわくさせて、「何をするの?」と尋ねました。「まあ、待て待て。黙って見ていなさい」。ルターは満足そうにひとりで笑いながら、回りの木を一つ一つ見て回りました。
ハンスがおのを持ってもどって来た時、ルターは、小さいけれどまっすぐに立っている一本のもみの木の前に立っていました。そしておのをじょうずに使って、それを切り倒しました。それから、笑いはしゃいでいる子どもたちを従え、木をかついで家の方へ行きました。戸口で立ち止まり、枝の雪を振り落としながらレナに言いました。「レナ、おかあさんに、ろうそくを何本かもらって来なさい」。
「はい、おかあさんも、もう起きていらっしゃるでしょう」レナは元気よく廊下を走って台所へ行きました。「おかあさん、おとうさんがおうちをクリスマスのためにきれいにするので、ろうそくをくださいって」。「それはいいことね」。明るい丸顔をしたおかあさんのケートはこう答えると、大きな戸だなをあけて、ろうそくを何本か取り出しました。レナはそれを受け取り、また元気よく居間に走って行きました。
ルターはすでに、ほかの子どもたちといっしょに、かわいい木をへやのまん中に立たせていました。
「ろうそくを木につけよう」。
「はあい」。
子どもたちは声をそろえて返事をし、ていねいに木の枝にろうそくをつけました。ルターがろうそくに火をつけた時、子どもたちは思わずつばを飲みました。光は木のしっかりした緑の枝の間に、明るく光りました。
「ああ、おとうさん、きれいだわ。おとうさんの考えは、世界でいちばんすばらしいわ」。レナは手をたたきながら言いました。
ルターは、愛情をこめてレナをなでながら、「神さまがお造りになった木だね。イエスさまに対するわたしの信仰のように、冬でも生き生きしている木で、クリスマスにおうちを飾るのにいちばんよい木だよ」と言いました。
「でも、おとうさん、ろうそくはなんのためなの」とレナが尋ねました。
「それはね、最初のクリスマスの夜の星空と、はかせたちをキリストに導いたあの一つの輝く星を思い出させてくれるものだよ。さあ、おとうさんはね、新しいクリスマスの讃美歌を作ったんだよ。イエスさまのことを思っていっしょに歌ってみよう」。
ルターは三人の子どもを前にして、彫刻のしてある、自分の大きなひじかけいすにすわりました。そして、一節ずつ、讃美歌を教えたのです。
いずこの家にも めでたきおとずれ
伝うるためとて 天よりくだりぬ
マリヤのみ子なる 小さきイエスこそ
み国にこの世に つきせぬ喜び
子どもたちが歌っている間、もみの木の枝につけられたろうそくは、明るく燃えて、ルターの家を、いかにもクリスマスにふさわしく見せていました。
(『アルフレッドとベード先生』ドロシィ.C .ハスキン著有賀英子訳30〜34頁から引用)
※もうかれこれ5年以上前になるが、ベック宣教師宅で見かけた造作物。左側のオレンジ色のものはろうそくだろう。こうして、クリスマスはイエス様が我が心の中にいらっしゃるか、確かめ、かつ賛美する日。
きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。(新約聖書 ルカの福音書2章11節)

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