2010年6月30日水曜日

山は動かなかった


 「山は動いた!」かつて社会党党首土井たか子氏が放った言葉である。21年前の7月の参議院選挙で社会党が46議席で、自民党の36議席を上回り、与野党の議席数が逆転した快挙の時であった。

 今回W杯サッカー選手権参加の日本チームの活躍は目覚しく、あわよくばベスト8進出と思わせたが、無念パラグアイにPK戦で敗退した。「山は動かなかった」。

 日ごろほとんどサッカーに見向きもしないくせに、今回は娘や妻に同調して、前半の試合と延長戦、PK戦をTVで視聴した。PK戦、もはや「運」しかない。選手もサポーターも、しかも敵味方双方が「祈る」しかなかった。そして「祈り」の結果が日本の敗戦であった。日本にとっては過酷な結果であった。しかし、誰一人選手を責める者はいない。「祈り」というものがそれほど人を謙虚にするのであろう。

 まだまだ本命をめぐるW杯獲得をめざし8チームの熾烈な戦いが続くことだろう。「敗軍の将、語らず」というが、一番悔しい思いをしているのは岡田監督かもしれない。勝ちチームにも優勝までの長いドラマがまだまだ続く。

 そして、このような真剣勝負の試合結果が、射幸心と金銭欲の虜にされた人々を悪へと誘惑する材料にされる世界があった。大相撲力士たちによる「野球賭博」である。

 この時期、サッカーにおける選手の活躍と大相撲協会における多数力士による不祥事が明らかにされたのはスポーツ界の余りにも対照的で皮肉な出来事であった。けれども、私たち一人一人にも人間の尊厳・栄誉の部分ともう一方でどうしようもない心の暗部・罪を明らかにしている出来事に思えてならない。

 パウロは「金銭を愛することが、あらゆる悪の根だからです。」(1テモテ6・10)と語り、イエス様は「あなたがたは、あなたがたの父である悪魔から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと願っているのです。悪魔は初めから人殺しであり、真理に立ってはいません。」(ヨハネ8・44)と悪に傾く人の心に、警告しておられる

 いよいよ参議院選挙も10日余りとなった。選挙の勝敗はいずれ明らかになる。国民の審判に注目したい。聖書は言っている。「たとい、私が・・・話しても、愛がないなら、やかましいどらや、うるさいシンバルと同じです。・・・また、山を動かすほどの完全な信仰を持っていても、愛がないなら、何の値うちもありません。」(1コリント13・1~2)。候補者の諸氏、声は小さくとも、くれぐれも自身の真摯な言葉で語りかけてください。

(写真はどこにもある日本の風景だが、「山」のように画面左から右に流れる濃緑の塊かのように見えるのは黒雲である。家人が「あんなところに、山があったの?」と驚いたように買い物から帰って来て「見て見て」と言うので、「そんな馬鹿なことがあるかい」とばかり出向いて、「雲」と確認した。ともに山を見て育ったので、こんな「雲」も「山」に見えたのだ。)

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