2010年5月24日月曜日
雨中の粋な出会い
朝から雨の降る一日であった。一月に初めて家庭集会に来られお会いしたMさんから、一度自宅に来てくださいと二回ほど電話や手紙でお誘いを受けていたが、今日やっと実現した。あれからすでに4ヶ月経っていたがどうされているかはわからないでいた。約11kmの行程で自転車で出かける予定であったが、あいにくの雨なのでお約束の今日でなく別の日にしてくださいませんか、と申し上げたところ、車でわざわざ迎えに来てくださった。
昨年の2月に奥様を急に亡くされた。お子様はそれぞれ独立し、世帯を別の土地で構えておられる。七十二歳の今、男やもめの生活を続けておられる。もちろんお宅を訪れるのは初めてであり、前回お話をお聞きしていたので少しは想像できたが、見ると聞くでは違い、より親しみを覚えさせていただく訪問となった。
何しろ、器用な方である。大は太陽光発電のソーラー設置から、小は竹とんぼまで、野菜つくりは広い畑にいちご、トマト、かぼちゃ、水菜、大根、ジャガイモ、里芋、人参、キャベツなどなど、作られていないものは一つもなかった。実のなる果樹もブルーベリー、ラズベリー、梅、みかん、イチジクと枚挙に暇なしである。すべて種から根気強く苗を育てて栽培される。おまけに烏骨鶏(うこっけい)も二羽いた。
もともと畑作りや様々な工芸細工は手がけておられたが、奥様が亡くなられた後は、毎日の食事ごしらえが身にかぶさってきた。だから、それまで料理は一切奥様任せであったが、今はすべてご自分で工夫しながら調理なさっていて新鮮な野菜などを上手に冷凍庫にしまいこみ、何日後の食事まですべて確保されている。それらの食事は食物名はいうまでもなく、グラム数までが明記されているという周到振りである。
何事もいい加減に済ますことができず、真面目な方である。お酒も飲まれないし、タバコもお吸いにならないでいて、生活の隅々にまで創意工夫がなされ、人生を何倍にも享受されている感じだ。私など何の趣味もなく、からきし工作が駄目な人間にとって想像もできない異次元のお方である。少年時代から苦労され、奥様とは最初の会社での馴れ初めだったとお聞きした。その奥様もご主人に劣らず多趣味で、また同じ趣味の持ち主で一緒に山歩きをされたり、旅に良く出かけられたようだ。
その奥様が突然亡くなられたのだ。三ヶ月間毎日泣いていたと言われた。もちろん、今も心の中の空虚さは何者にも代えがたいと感じておられる。だからこうして一度会ったきりの私たち夫妻をわざわざ招待してくださったのだ。一緒にイチゴ狩りをさせていただいた。すべて無農薬で、大きくはなっていない、小粒のものばかりであるし、今日の雨で青味を帯びているものも多かったが二ザルほど採らせていただいた。その上、帰りには水菜や春菊や珍しい盆栽などのお土産をいただいて帰って来た。
こんな初めてとも言っていいお交わりであったが、三ヶ月間泣いていたのがピタッとやんだのですよ。それはこの用紙のおかげですよ、とゴソゴソと出して見せてくださった。私たちには見覚えのあるものだった。集会に出席している姉妹がその頃仕事の関係で知られ、すでに渡されていた祈りのカードのようだった。それはベックさんが書かれた次の祈りのことばだった。
愛する主イエス様
私のわがままのために、代わりに罰せられ死なれたことを感謝いたします。
あなたの流された血によって、すべてのあやまちが赦され忘れられていることも
感謝いたします。
あなたを信じますから、死んでからさばかれることがないことも感謝いたします。
あなたを信ずる者は、死んでも生きると約束されていることも感謝いたします。
死ぬことは終わりではありません。あなたと一緒になることです。
私の国籍は天にありますから感謝いたします。
今からのことすべて、あなたにおまかせいたします。
あなたの御名によってお祈りいたします。
アーメン
このことばを読んで自分の涙はピタッと止んだと言われた。私たちはそれまでイエス様のことをほとんど何一つ話さなかった、また話できず、ただMさんの驚異的な生活に圧倒されてその一つ一つをお見せいただいてばかりしていたのだが、ある時からその話になった。イエス様はすばらしいと思った。
Mさんが奥様の死という大きな十字架を背負って歩まれているそのことを十分お知りなのだと思うことができたからである。雨の降る一日とは言え、このような出会いを与えてくださった主イエス様に心から感謝したい。
すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。わたしは心優しく、へりくだっているから、あなたがたもわたしのくびきを負って、わたしから学びなさい。そうすればたましいに安らぎが来ます。わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからです。(新約聖書 マタイ11:28~30)
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