2012年12月30日日曜日

罪人を尋ねなさるキリスト(6)

「ノアのはこ船」ピーター・スピアー絵
わたしたちは、健康を害した人のことを聞くと、その人に同情し、気の毒なことだと申します。わたしたちの心は同情でいっぱいになります。財産を失ってしまった人に会うと、「なんと気の毒なのだろう」と申します。名声を失い地位をなくした人がいると、「それは気の毒なことだ」と申します。わたしたちは、健康とか富とか名声を失うことが、どういったものであるかを知っています。しかし、これらすべてのものの損失も、魂を失ってしまうことに比べたらなんでしょうか。

有名なシカゴの大火のあった少し前、ある眼科の病院におりました。ひとりの母親が、生後数ヶ月しか経ていない赤ちゃんを医者のところに連れて来て、その子の目を見てくれるように頼みました。彼は診察しました。そして、その子はめくらで一生涯見ることはないだろうと宣告しました。彼の宣告を聞くやいなや、母親はその子をひっぱって胸の中にしっかりと抱きしめ、恐ろしい叫び声をあげるのでした。わたしの心は、刺されたようになり、涙を流さずにはおられませんでした。医者も泣いていました。

「ああ、わたしのかわいい子! おまえは、おまえを生んだおかあさんを見ることができないの。ああ、お医者さま、わたしにはこらえきれません。ああ、わたしのかわいい子」

それは、どんな人の心をも動かすような光景でした。しかし、視力を失うことは、魂を失うことにくらべたらなんでしょうか。わたしは、自分の魂を失わないのなら両眼をとり出して、めくらのままで死にたいと思います。わたしにはふたりのむすこがあります。わたしがこの子どもたちをどんなに愛しているか、ただ神のみごぞんじのことです。しかし、むすこたちがキリストを持たず望みも持たないで成長し、死ななければならないのを見るくらいなら、むしろ、彼らの目がえぐり出されるのを見たいと思います。

魂を失うこと—それはなんと恐ろしいことでしょう! もしあなたがまだ失われたままでいるなら、どうか安住しないで、キリストのうちにある平安を見出してください。もしあなたの子が箱船の外にいるなら、彼らが中にはいるまで安心しないでください。子どもたちが、キリストのもとに行くのを止めてはなりません。人の子が来たのは、白髪の老人だけでなく、子どもをも救うためでした。キリストが来たのは、すべての人、富んでいる人や貧しい人、老いた人や若い人のためでした。若い人よ、もし、あなたが失われているのなら、神があなたにそれを示し、あなたがその国に向かって前進されるようにしてください。人の子はあなたを尋ね出して救うためにおいでになったのです。

(同書34〜35頁より引用。「人は、たとい全世界を手に入れても、自分自身を失い、損じたら、何の得がありましょう。もしだれでも、わたしとわたしのことばとを恥と思うなら、人の子も、自分と父と聖なる御使いとの栄光を帯びて来るときには、そのような人のことを恥とします」ルカ9:25〜26。)

大洪水 ヤコブス・レビウス詩 ピーター・スピアー英訳 松川真弓訳

ノアの作ったはこ船は せいが高くて、はば広く
板はあつくて、どっしりと いさましくもそびえたつ。 
主はのたもうた、 乗りこめ、と。

ノアの家族がよじ登る。 つづいて乗りこむ動物は、
カッコウ、コウモリ、コウノトリ、ヒグマに、
クマタカ、クマンバチ、カマキリ、キリンに、
キリギリス、ミツバチ、ハチドリ、とりどりに、
メジロにホウジロ、アルマジロ、ビーバー、チーター、
アリゲーター、ノウサギ、カワサギ、ヤギにトキ、
ドジョウにダチョウ、モンシロチョウ、ゴクラクチョウと
アゲハチョウ、シチメンチョウもかけつけて、マムシにマツムシ、
カモノハシ、イヌワシ、アザラシ、ヤマアラシ 
      
あらしの始まるそのまえに、 地上の動物すべてから         
選ばれたてきたものたちが、 大きなものも小さなものも       
元気なものもか弱いものも、 よごれたものもきれいなものも     
どうもうなものも静かなものも かたまったりはなれたり        
歩いて、はって、のそのそと そのはこ船に乗りこんで、       
かわいた場所にくつろいだ。

けれど、のこったものたちは あしきものもよきものも
とどまるものは、もういない。 地上をおおうこう水は
のこったみんなをのみこんだ。       

人間のおかした 身のけのよだつ罪のうえ、
神のいかりはくだされた。
人間のおかした わざわい多い罪のため、
のこったみんなが死んだのだ。 清めのための時がたち、
主は罪をゆるされて、 すくいをあたえてくださった。        
ただよっていたはこ船は ふたたび地上にもどされた

清められた土地に栄えあれ。 主のいつくしみを ほめたたえよ!

(引用は『ノアのはこ船』1986年評論社刊行より。ヤコブス・レビウス〈1586〜1658〉はオランダの詩人でそれを絵本作者スピアー氏が英訳し、その文章は韻をふんだすばらしいものだそうです。それを松川さんが日本語に置き換えるために努力された訳文です。)

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