多くのキリスト者が生活しているというのに、何と幸いが少ないことでしょう。それは彼らが、神に身を委ねる時に、何かが欠けているためであり、また彼らの聖化が何かしら妨げられているためであって、彼らはもはや神の御霊に満たされてはいないからであります。
キリスト者が世と妥協する時には、その人の霊的な力が弱められることは不可避なことであります。「光とやみとなんの交わりがあるか」(新約聖書 2コリント6:14)。できるだけこの世とおなじように日々を過ごしながら、しかもはっきりとキリストへの信仰を否定しないキリスト者は、決して周囲の人々に対して幸いとはなりません。「あなたがたは、この世と妥協してはならない。むしろ、心を新たにすることによって造りかえられなさい」(ローマ12:2)。今日神の国の発展の最大の妨害は、実にこの世俗的な心を持つキリスト者なのであります。この世のことや、世俗的な興味と快楽に傾いている心は、神の国における収穫を破棄しようとする毒草であります。
わたしたちの時代もまた、ヨハン・アーントの次の古いことばをきく必要があります。「もし諸君が心の中に、御霊のたいせつな富をしまっておこうと思うならば、神と神の国とから諸君をひき裂くいっさいのことに対して用心しなければならない。諸君はそのときには、この世の仲間や慰めや歓喜を恐れるであろう。そして、諸君がどうしても、この世俗的な環境の中を動きまわらなければならない時には、みずから制することができるようにと祈り、心を神に向けよ。そうすれば諸君の心の奥に平安と喜びをもった聖霊を再び持ち続けることができるであろう」。
多くのキリスト者の生活が、貧弱きわまるものであり、幸いに欠けている主要な原因は、彼らとこの世の関係の中にあります。あなたがこの世的な霊を無くしてしまおうと考えないうちは、神の御霊に満たされようなどと期待してもできないことです。
たしかにこの世から離れた生活と、神に捧げられた生活とが、その霊的な生活のほとんどを今一度この世にもたらすことができます。もしもあなたが、この世に対して幸いをもたらす者であろうと思うならば、まずこの世に別れを告げなさい、そして後に、新たな姿をもってこの世をあなたと再び出会わせなさい。その時、この世はあなたに注目するでしょう。この世があなたを見るときには、あなたが身に帯びているすがた、あなたの救い主をただちに見ることでしょう。
自己本位と不従順その他すべての罪は、キリスト者の力を腐蝕し荒廃させます。豊かな生活を送ろうと欲する者はすべての罪を放棄し、自分の生命すらも死に渡してしまわなければなりません。主に対して、自分の一部しかゆだねないことによって、多くの主の僕らの霊的な力が、制限されています。いっさいが神のみ心のままにゆだねられていないからです。主の聖壇の上に、すべてが横たえられない前には、主の火は下らないのであります。あるキリスト者たちの行なうすべてのことの中に、自我が現われています。彼らが欲することは、神のためではなくむしろ自分のためであります。うわべは主の家に対して熱心であるかのように見えながら、その実はただ自分の個人的な名誉に対する病的な野心を仮装させているにすぎないのです。あるいは、彼らが大胆さを欠いている根深い理由は、激しい野心をあらわに示そうとしない点にあるのです。彼らの働きの中に喜びを欠いているのは、ほかの主の僕らに対するそねみとか、冷たい心によるものであります。エルサレムのために、主が涙を流したもうた時に現われたものは、エルサレムの人々の進歩があまりにもわずかであったことに対する悲しみでありました。
これらの中にあって、すべての正しい主の僕は、一生の間世と戦わなければなりません。彼はくり返し、古い自我が再び頭をもちあげることにいつも気がつくのです。しかしながら、もしも御霊の力を働かせようと思うならば、古い自我に対して戦うこともせずに黙認してはなりません。正しい主の僕がしなければならない献身は、自らの野心的な自己を死に渡してしまうことであります、しかもそのような献身については、非常に熱心でなければなりません。十字架につけられた自我が、まだ生きているぞと叫ぶたびに、御霊の力を新たにし、再び自我をしっかりと十字架につけて殺してしまおうと、容赦なく釘をうちこまなければなりません。古い自我の最小部分に対しても、寛容であったりゆるしたり看過したりする主の僕は、祝福のない無力な奉仕しかできません。「尊い器」となりたいと思う者は、「きよめられ、主人に役立つものとなり、すべての良いわざの間に合うようになる」(2テモテ2:21)ことが必要であります。
「自分の命を救おうとするものは、それを失い、それを失うものは、保つものである」(ルカ17:33)。「手をすきにかけてからうしろを見る者は、神の国にふさわしくないものである」(ルカ9:62)。
(「聖霊を信ず」355〜358頁)
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