兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の中に連れて行き、全部隊を呼び集めた。そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、・・・また、葦の棒でイエスの頭をたたいた(マルコ15・16〜19)
過越祭りの間は騒動が起こり易いので『官邸』の一部である兵営にはローマ兵が平素よりも多く屯していた。『全隊』では一レギオンの十分の一すなわち六百人とも言い、あるいは二百人とも言われているが、とにかくたくさんの荒武者が面白がって、代わる代わるイエスを打ったのである。
『イエスの頭をたたいた』の字は繰り返し繰り返して打つとの意味である。『いばらの冠』はローマ皇帝が冠る月桂冠を真似たので、紫色の衣とともにイエスが『ユダヤ人の王』だと自称したのを嘲弄したのである。イエスの人格の如きは彼らの目には三文の価値も無かった。
十字架を忍ぶとは斯かる侮辱を受けることをも含んでいるのである。主は幾度も『異邦人に引き渡します。すると彼らはあざけり、つばきをかけ、むち打ち、ついに殺します』(マルコ1 ・33、34)と預言し給うたが、今文字通り成就しつつあるのである。自国民に棄てられ、異邦人に嘲弄されるのは御一生涯のプログラムの重要な一つであった。これは世界万民の罪を負い給う記号となったのである。
祈祷
私のために『長老され、つばきされ、打たれ』給いし主よ。私はあなたが打たれたことによって生かされたことを感謝申し上げます。願わくは私にあなたの心を与えて、打たれ罵られつばきされて、なお彼らを愛し彼らのために祈る心をもたせて下さい。アーメン
(以上の文章は『一日一文マルコ伝霊解』青木澄十郎著346頁より参考引用し、題名は引用者が便宜的につけた。讃美歌124https://www.youtube.com/watch?v=Bu6g9FCM7rs
David Smithは『The Days of His Flesh 』の中でその第48章 ポンテオ・ピラトの前にて と題して邦文にして26頁にわたる詳細な文章を認めているが、先ずその項目だけを記す。〈邦訳920頁、原書477頁〉
1知事の許に 2ポンテオ・ピラト 3軍旗をもって凌辱 4神殿の宝物を穢す 5憎悪の増加 皇帝の譴責 6ピラトの難局 7駐在所『プレトリアム』にて 8ピラト余儀なく事件を受理す 9イエスの調査 10ピラト無罪と宣告す ピラトの避棄事件ヘロデに移さる 11ヘロデ・アンテパスの前にて 12クラデヤよりの使者 13バラバを選ぶ 14イエスの判決 15鞭撻と罵詈 16四回目の忌避 ピラト憐みを訴う 17ピラトの煩悩 18イエスとの会見 19イエスを釈放せんとする決心 五回目の忌避理論と愛国心 20群衆の喧騒 21十字架刑の宣告
その中の15鞭撻と罵詈 が本日の引用聖書個所の叙述に沿っていると思うので転写する。
ローマ人は囚人を十字架に掛ける前に必ず鞭で擲った。その鞭は実に物凄い道具であって、数條の革紐を結び、その紐へは何れも鉛の尖端の鋭い球と、骨の鋭い片とが取りつけられたものである。六人の司刑官が罪囚を捕らえ、これを裸にして柱に縛し、残忍な鞭撻を加えるのであって、一撃ごとに戦慄する肉が切れて、血管や、時としては内臓までも露出し、往々にして歯や眼が抜けて飛ぶのであった。斯くして囚人がその拷問のために息の絶えることも珍しくなかったのは不思議でない。兵士たちはイエスを曳き出してこれを鞭打ち、その気衰え出血甚だしきイエスの周囲に集まって、野鄙な嘲弄を浴びせた。その裂けた背にヘロデの紫の上着をかけ、荊を編んでそれをイエスの頭に被らしめ、王笏の代わりとして葦を右の手に持しめた。然る後嘲弄的に臣民の礼を装い、その前に跪いて『ユダヤ人の王、安かれ』と挨拶した。次に彼らはイエスの顔につばきし、手から葦を奪ってその頭を殴った。殴るごとに荊の針は額に食い込むのであった。)
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