2022年12月22日木曜日

葬り(上)先頭に立った二人の男

アリマタヤのヨセフは、思い切ってピラトのところに行き、イエスのからだの下げ渡しを願った。ヨセフは有力な議員であり、みずからも神の国を待ち望んでいた人であった。ピラトは・・・イエスのからだをヨセフに与えた。(マルコ15・42〜45)

 神はヨセフを動かしてイエスの死体を丁寧に取り扱い給うた。ここに『からだ』の字が二度出ているが、ヨセフが乞うたのはソーマすなわち『からだ』であって、ピラトの与えたのはプトーマすなわち『死骸』である。二人の考え方の相違を示している。

 ソーマの本来の意味は生きた体である。もちろん死体をも指すのであるけれども、ヨセフは丁寧に『イエスのからだ』と言った。しかるにピラトはプトーマすなわち倒れたもの単なる『死骸』と言った。ヨセフがこの挙に出たのは実に『思い切って』と言われるほど大胆な行動であった。

 祭司長始め議会全体が死刑に定めた人の死体を斯くも丁寧に取り扱うのは議員である彼にとって、彼には失うべき地位と富とがあるだけ、それだけよほどの勇気を要したに相違ない。少なくともこの行動によって同僚の議員から憎まれるに至ったことは想像に難くない。伝説によれば議会はこの行動によって彼を獄に投じたとさえ言われている。

祈祷
神よ、あなたは腐った議会にもヨセフのような正義に勇敢な人を残されました。願わくは私たちにもこの腐った世にあって彼のように勇敢に行動させてください。彼のように自分の地位と名誉とを賭して正義を行う者とならせてください。アーメン

(以上の文章は『一日一文マルコ伝霊解』青木澄十郎著356頁より参考引用し、題名は引用者が便宜的につけた。讃美歌180https://www.youtube.com/watch?v=v6k1jHqSoTo

1 クレッツマンの『聖書の黙想』はこのヨセフに触れて次のように描く。

 目立たない所に控えている者をさげすんだり、その信仰を軽んじたりしてはならない。試みの時にはあとの者が先になるだろう。

 そしてこの言葉は、イエスの葬りの時に、先頭に立った二人の男の場合、まさに真理だった!

 太陽はその創造主の悲惨な死の上に、一瞥をなげかけるとすぐ西に沈んで行った。これはキリストの葬りの準備が、急を要するものであることを物語っていた。まず最初に、十字架から、イエスのからだを引きとる許可を手に入れなければならない。ここで、アリマタヤのヨセフの有力な地位が役に立つ。彼は勇敢にピラトのところへ行って、主の体の引き取り方を依頼した。このおかたを、彼は救い主として、敬愛し始めていたのである。しかし、それを告白するほどの信仰の強さを、まだ持ってはいなかったようだ。

 ピラトは、イエスに罪を宣告した裁判所の一員がイエスの友人であったことを知って、全く驚いたに違いない。百人隊長がイエスの本当に死んでしまったことを確かめるや、許可はすぐに下りた。聖書の他の個所では、これまた衆議所の議員の一人であるパリサイ人のニコデモがヨセフに協力して、亜麻布や、その他ユダヤ人が葬りの時に用いるならわしの、香料や香油などをたくさん持ってきたという記事が記されている。

2 David Smithの『The Days』から

24 ヨセフ、ピラトに請う

 信仰篤き婦人と、一団体となってはるかに十字架の光景を眺めたイエスの知人のうちに、古のラマタイム・ゾヒムすなわちアリマタヤの住人にしてサンヒドリンの議員たるヨセフという人物があった。彼は敬虔なユダヤ人で『神の国を待ち望んでいた』のであったが、その同僚ニコデモと等しく心においては弟子であって、ただ『ユダヤ人を恐れてそのことを隠しておいた』のであった。彼はその朝サンヒドリンの判決の会議に加わらず、またこれに反対も試みなかった。恐らくは彼は集会に用心深くも欠席していた者であろう。彼が自ら取った手段の如何に重大な結果に至ったかを知ったときには既に遅かった。彼らは何らの手段も施す能わざりし悲劇を目撃して、悲痛、慚愧の情に胸をえぐられつつ佇んだ。過去ははや挽回することはできぬ。故に彼は直ちにイエスの党派たるを自ら宣言してできうる限りの償いを試みようと決心した。彼はその犠牲の死骸が如何に処分せられるものかを心得ていた。故に彼らを取りおろして、飢えた野犬や猛禽に荒らされるを防ぐのを口実として、少なくとも手厚い埋葬をもってせめて尽くすに由なかりし誠をイエスに献げたいと決心したのであった。由来十字架に釘づけられたものの友人はその屍を買って相当の葬式を行う習慣があった。ヨセフは富裕であったので、これを容易に支払い得た。『思い切ってピラトのところに行き、イエスのからだの下げ渡しを願った。』イエスの当時の威風は知事を覚醒せしめたが、彼の霊魂は今なお畏縮していた。イエスが斯く速やかに死なれたことを聞いて驚きつつ百人隊長を召してこれに尋ね、その事情を詳しく質して一層煩悶した。その苦悶の状態は所作に現れている。この不幸な代官は金銭に汚いので何時も悪名を負い、皇帝に訴えられたのも、その不行跡の最大カ条の一つは、収賄であった。しかもこの貪欲漢がヨセフの提供した代価をしりぞけて、その屍を無償をもって下げ渡したほどに彼の苦悶は甚だしかった。)

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