2020年8月13日木曜日

クロムエルの手紙(1649年8月13日)

your most humble servant 署名・肖像


 畔上賢造という方がおられる。この方が大正初期に翻訳し発表されたカーライル著『クロムエル伝』がある。本ブログでも何度かご紹介したことがある小林儀八郎さんhttps://straysheep-vine-branches.blogspot.com/2015/02/blog-post_26.htmlが親しんでおられた著者である。今から10年ほど前に、同氏の全集を遺族の方から譲っていただいていたが、これまで書棚の片隅に置かれたままだった。ところが、最近知人になった方からクロムエルの話がたまたま出てきた。クロムエルについて自らも何らかの知見を得たいと思うようになった。その時にこのカーライル著『クロムエル伝』の存在を思い出し、ここ4、5日読んでいる。

 そんな時、またしても日々読んでいるブッシュさんの『365日の主』の昨日のところの冒頭で、権力者のひとつの例示としてクロムエルがフリードリッヒ・ウイルヘルム二世、ヒトラーとともに名前があげられていた。ブッシュさんは「怒りを遅くする者は勇士にまさり、自分の心を治める者は町を攻め取る者にまさる」(箴言16:32)という聖句のすばらしい解き明かしをなさっていた。

 確かに、クロムエルは「町を攻め取る」者であった。アイルランド、スコットランドと17世紀内乱状態のイングランドにあって「鉄騎兵隊」の指揮官として権力をほしいままにしたと言われてもしかたがないかもしれない。しかし、彼が自らの心を治めていなかったか?いなかった、と果たしてそう簡単に言ってしまっていいのだろうか、という思いがした。

 幸い、畔上さんはカーライルが紹介している200数十通の手紙を1600年代(我が国で言うと江戸時代初期に該当するが)当時にあわせ、訳しておられる。2020年の私たちにはそのままでは読みにくいかもしれないが、以下そのまま転写した。しかも1649年の8月13日の日にちだけは今日の日付のある手紙である。(以下は『畔上全集』9巻372頁より引用)

我が親愛なる娘よ〔子の嫁に対して〕

 御身の手紙ははなはだ喜ばし。私は御身を愛しおるもの、御身よりの贈り物は何によらず喜ばしく候(そうろう)。さればつまらぬご助言申し上げたく候。
 何よりも先づ神を求め神の御声を聞くことが大切にて候。御身にして怠るなくば主の声は耳または心に聞ゆるものにて候。御身の良人(おっと)をも勧めてこの態度を取らしめたまえ。現世の快楽や有形の事件を第二、第三とせられよ。キリストにおける信仰によってこれらの上に出られよ。然らずしては真にこれらを利用しまたは味わうこと出来がたく候。御身の淑徳(しゅくとく)増し、主にして救い主なるイエス・キリストを益々深く味わわんことを祈る。主は近し、これそのわざにて明らかに候。アイルランドにおける主の大恩恵は明らかにこれを示し候。委細は良人より聞きたまえ、我ら皆感謝の思いにあふれざるべからず。我らかかる恩恵について神を賛美せんには大いにキリストの精神を要し候。我が親しき娘よ、主御身を恵まんことを祈る。

1649年8月13日       ジョン号船上にて
                   御身の親愛なる父
                    オリヴァー・クロムエル

ハースレーに在る
 愛する娘ドロシー・クロムエルに

0 件のコメント:

コメントを投稿