2014年3月29日土曜日

「ひとり旅」より

先日、国会図書館で小林儀八郎さんがお世話になられた長谷川周治さんの資料を検索中「ひとり旅」という館内限定閲覧資料を見た。その内容は戦時中日本から米国に留学したご子息が祖国の家族に送られた手紙の集成であった。たくさんある手紙を全部見たわけではないが、その中で眼に留まったものを下に写す。この時、ご子息は25歳である。

その後お変わりありませんでしょうか。この間お父さんとお母さんと静ちゃんから長い手紙をいただいてから、二週間になると思います。皆丈夫でおられることを知り神様の御摂理を感謝しております。堀の内の家に御恩恵の豊かにあらんことを祈っております。家の人が皆神様に用いられ、友人や隣人に親切にかつ福音を知らせるよう祈っております。何人の信仰といえども私たち一人一人を救い、新たに生まれ変わらせることはできません。イエス様ご自身のみ私たちを救い得るのです。内村先生の遺墨帖を通して、内村先生を救い用いたまうたナザレのイエス様の十字架上で死なれ給うたことを、宣べ伝えられるよう祈ってやみません。 日本のキリスト教はあまりに倫理的のようです。イエス様ご自身による救いをのべ伝えないと、力がなくなってしまいます。

このあとアメリカでのこの人の仕事(聖書を販売する)が今どんなふうになされているかが書かれている。そして

今日は日曜で近所の教会に行きました。立派な説教でしたが、イエス様の十字架による救いを強調しなかったので非常に残念に思いました。私たちは恐ろしい罪人なのです。私たちおよび他の人たちの一番必要なのはイエス様によって新たに生まれ変わり、イエス様に毎日生きることです。イエス様は生きておられて、我々信者の救い主として、友人として、主人として、父が子供をそだてるように信者のこの世における日常の生活—霊的、物質的の世話をして下さるのです。イエス様にまさる友はなく、イエス様にすべてをおまかせして私たちは百パーセント安全であり、真の平和を得られるのです。

これから先、どのようなことが起こるかわかりません。明日にもこの世の終わりが来るかも知れません。明日にも世界の万物が滅びてしまうかもわかりません。しかしイエス様の再臨を待つ者は幸福です。千代経し磐に身を任せおる者は心安しです。

僕は、これから田舎の方に奥深く、聖書を売りに行くつもりです。日本がドイツやイタリーなどの仲間入りをしているゆえ、日本人たる僕が他の人々に疑惑の眼をもって見られ、あるいは面倒なことになるかも知れません。こちらに四年半おりますが僕の英語はやはり外国人の英語に過ぎず、この英語という外国語を用いてこの国の人に、聖書の色々な特長や用い方、勉強の方法など説明せねばならぬのです。人一倍はづかしがりやの僕が、このようなことをすることになったのは神様の御導きと信じております。どうか祈って下さい。この夏は今までの中で一番むづかしい仕事をすることになったのですゆえ。

これまでの夏は筋肉労働をしましたが、今年の夏は頭と精神の労働をせねばならぬのです。しかしこれは僕の将来のために、非常に有益な経験となることと信じております。そればかりでなく、多くの霊的に飢え渇いている人に、聖書の勉強方法を知らせることは、非常に有益な、何物にも勝る善い仕事と信じております。

多くの信者は10年、20年、30年、と信者になっておっても、彼らの聖書知識は驚くほど、ほとんど進歩を見ないのです。私たちの霊的成長は、聖書の知識の進歩と伴います。(聖書学者でも霊的成長しない人はあります。新たに生まれ変わらぬゆえです。しかし霊的に成長し神様に用いられた人で、聖書の勉強を怠り、おろそかにした人はありません。)信者のうちほんの僅かの人のみ聖書それ自身の勉強をします。僕たちの売る聖書はこの国で、多分世界中で一番聖書そのものの知識をひろめ、かつ一般の人たちにも容易に用いられ得るようにできている聖書でしょう。・・・・

1941年5月25日

(『ひとり旅』742〜744頁より引用。 あの対日関係が悪化する前夜、米国でこのような若人のキリスト者が祖国日本と米国の人々の救いと成長のために祈りながら働いていたとは想像もしなかった。「生まれたばかりの乳飲み子のように、純粋な、みことばの乳を慕い求めなさい。それによって成長し、救いを得るためです。」1ペテロ2・2

0 件のコメント:

コメントを投稿