2009年11月30日月曜日

魁皇と「ウルフの目」


 大相撲が終わった。優勝は白鵬で15戦全勝であった。私のひいきの力士は魁皇である。やっとこさ千秋楽に勝って、給金を直した。ほとんど駄目かなと思わせながらこの一年間勝ち越してきた。特に今場所は十日目に通算805勝をあげ、力士記録第二位になった。

 その日は一方の古参力士千代大海が負け越してしまい、大関陥落の日になってしまった。東京新聞の見出しは「大関明暗」と主見出しを付けた。いつも読む元横綱千代の富士の相撲評記事「ウルフの目」は両記事の対角線上にあり、いやが上にも私の目を引きつけた。千代の富士は807勝で第一位の記録保持者であり、一方、千代大海の親方である。このコラムを私はNHKの北の富士や舞の海の解説と合わせて愛好している。彼らの愛が紙面にまた声にあふれているからである。

 ウルフ(元横綱千代の富士のこと)はその日、「地元で新記録を」と九州場所で九州出身の魁皇が残り5日間で自分の記録を塗り替えてほしいと書き、一方で大関陥落の千代大海に次のことばを書いた。

 残念ながら、私の弟子である千代大海が大関を転落することになった。長い間、大関を務めてきたライバルが大記録をつくろうとしている。千代大海も魁皇の姿を見て、もう一度頑張ろうとしている。その意思を尊重して、来場所を見守ってやりたい。

 いい親方を持って千代大海も幸せな男だ。ところで、今日のウルフの目は、「魁皇、記録が励みになる」と自身の記録にあと一勝と迫った後輩力士に賛辞の言葉を送っている。

 最後の最後で魁皇が勝ち越し、かど番の危機を脱した。立ち合いで右上手を取りに行ったが、琴光喜が前みつを狙って出してきた左腕を抱えて瞬時の小手投げで一蹴(いっしゅう)した。これで幕内勝利が806勝となり、来年初場所でわたしの記録(807勝)が塗り替えられるのが確実となった。・・・808勝から積み上げる新記録が37歳の体を刺激してくれるはずだ。左四つから得意の右上手を取れば、まだまだファンを楽しませる相撲がとれる貴重な存在だけに、一番でも多く、その相撲を見せてほしい。

 これはこれで魁皇という年齢とともに衰えてゆくしかない大関に最大限の励ましの言葉を送っている。角界には私の知らない問題が隠されているのかもしれないが、こうした記事を読んで、励まされない人はいないのではないか。たかが格闘技ではない。大相撲と違い、ボクシングでは内藤選手がチャンピオンの座を亀田選手に奪われたのも昨日のことであった。

 パウロは2000年前、闘技、ボクシングをする選手を引き合いに出しながら自分の人生を次のように語った。もって銘とすべきことばでないか。

闘技をする者は、あらゆることについて自制します。彼らは朽ちる冠を受けるためにそうするのですが、私たちは、朽ちない冠を受けるためにそうするのです。ですから、私は・・・空を打つような拳闘もしてはいません。私は自分のからだを打ちたたいて従わせます。それは、私がほかの人に(福音を)宣べ伝えておきながら、自分自身が失格者になるようなことのないためです。(新約聖書 1コリント9・25~27)

(写真は栃木県大平下近辺の山々。車窓から紅葉にまみえる風景を撮影しようとしたが、これが精一杯だった。「霜月の 錦秋残し 師走へ」)

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