2012年3月9日金曜日

『聖戦』第4章 霊王の諸将人霊を囲む(下)

[諸将は人霊市を回復するために軍勢を送ることを決心する—人霊市は固く決心して抵抗し、その結果諸将は冬営地にまで退却するー伝説氏、人智氏、人工氏は叱咤将軍の配下に登用されるが、捕虜となり、魔王の所に連れて行かれる:三人は万屋将軍のもとで魔王の兵士と認められるー敵意が再開され、町は全く陵辱されるー人霊の飢えと反乱ー町は和平交渉がなされるように思われたが拒絶した分別氏と良心氏の懐疑氏との争論ー小競り合いが続いて起こされ、損害が両陣営に生ず]

 彼らは直ちに相談会を開いた。その結果、我意氏が耳門に往って、喇叭を吹いて、諸将を呼んで談判することになった。我意氏は壁の側に往って喇叭を吹いた。 諸将は甲冑に身を堅めて、一万の兵とともに来た。我意氏は言った。自分たちは諸将の召呼(まねき)を聴いて熟考した。そして諸将および霊王と条約を結びたい。その条約の箇条はわが君主の命ずるところによればこうである。この箇条が許されたらば併合して差し支えない。

 1、新市長と忘善氏は大胆なる我意氏とともに霊王の下にありて人霊の市と城と門との管理者たるべきこと。
 2、巨大なる魔王の下に現につかわれる人々は霊王の下においても人霊市において住家も宿所も自由も安全たるべきこと、
 3、人霊の市民は在来許されたる権利と特権とを認可され、彼らの唯一の君にして大いなる擁護者たる魔王の治下にある時と同じく、永久愉快に生活すべきこと。
 4、新たなる法律、官吏、裁判官は市民の選挙または同意を経ざれば、効力を生ぜざるべきこと。

 「かかる平和の条件を入れられるならば、我らは汝の王に服従せん」と彼らは言った。
諸将は人霊市のこの薄弱な申し出と傲慢不遜な要求とを聴いて、再び決心する所あった。叱咤将軍は次のように演説した。

 「ああ汝ら、人霊の住民よ、余は汝らが喇叭を鳴らして談判せんとするを聴いて心に悦んだ。汝らがわが王に従わんとすと言うを聴いて、なおさらに悦んだのである。しかるに何ぞ、愚かなる条件をつけてへ理屈を並ぶるや。汝らはおのが面前に罪の妨げを置くのである。わが歓喜は今や悲しみに変わった。汝らが帰り来るというわが始めの希望は疲れに疲れた心配と変わった。

 人霊の昔の敵である邪思案(よこしましあん)がかかることを建言してこれらの条件を作ったのであろう。しかしながらその条約は少なくとも霊王につかえる人々にとりては耳にするだも値なきものである。故に我らはかかる事柄をば最大なる罪として断固拒絶する※。
されどああ人霊よ、汝らが我らの掌中、いな我が王の掌中に身をまかすならば、また王の善しと見たまう条約をなすことを王に一任するならば、かえってそれは汝らにとりて最も大いなる利益である。そして我らは汝を受け入れ、平和は汝とともにあるのである。しかるに汝らが霊王の腕に身を委ねるを好まぬならば、現状を維持せよ、我らは施すべき手段を知っている」


 このあと反撃に転ずる人霊市の市長老懐疑氏の演説で何もかもふいになった。和睦の望みはなくなり、それぞれ諸将は陣営に帰り、市長は城に帰る。
 『聖戦』のおもしろさは、私たちはもともとそれぞれ主なる神様に対して様々な思いを持つ者だが、その心の思いが、擬人化されて描かれているところにある。バ ンヤン氏はこの一冊で十分この人間世界の「霊のたたかい」を描き切ったと思う。何度も読んでみたい本である。彼はこの2の文章中※に下記のみことばを挿入している。

それにもかかわらず、神の不動の礎は堅く置かれていて、それに次のような銘が刻まれています。「主はご自分に属する者を知っておられる。」また、「主の御名を呼ぶ者は、だれでも不義を離れよ。」 (新約聖書 2テモテ2:19)

0 件のコメント:

コメントを投稿